残留農薬がもたらす体への影響と世界基準の詳細

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安全な農産物を食べるのは消費者が求める権利です。日本の法律では作物ごとに一定の基準が設けられ、残留農薬は体への影響が生じない程度の数値に留めることが決められています。その一方で農薬に関する知識の乏しさから、過剰に農産物を忌避する問題が生じている事実も無視できません。

ここでは残留農薬の影響や国ごとに異なる基準、消費者に求められる姿勢についてお伝えします。

11品目の野菜の残留農薬を検査した高知県農業技術センター

農薬を使うメリットや成分が残ってしまう理由

現代の農業で農薬は必要不可欠と言っても過言ではありません。限られた面積の田畑で安定した収穫量を得るには害虫や病気による被害を軽減させる必要があります。かつては人の手で害虫や雑草、弱った苗を取り除いていましたが、効率が悪く、収穫量の減少を予防するには至らなかったのも事実です。

その点、農薬を使えば短時間で害虫の駆除や病気の予防を行うことができます。防除作業に費やした時間を栽培や収穫に回すことができるので、農作業の効率性が大きく向上したと言えるでしょう。人手を必要としないので、少人数での農業も可能になります。

農薬の成分は広範囲にわたって万遍なく行き渡るので、広大な田畑でも安定した収穫量を維持できるのです。その一方で農薬の過剰な使用が環境に悪影響をもたらす事実は無視できません。現在使われている農薬の多くは時間が経つと自然に分解されるので安全ですが、それでも使用量が多すぎると有害な成分が残ってしまうのです。

農産物に農薬の成分が付着したまま収穫され、市場に出回る事態が稀に起こりますが、これは生産者が農薬の使用量を誤ったのが主な理由です。また、特殊な形状の農産物は葉や茎のすき間に成分が入り込み、分解されずに残ってしまうこともあります。

前の年に収穫した農産物の葉や根を細かく砕いて田畑に撒き、付着していた農薬の成分が土に混ざるケースも少なくありません。

残留農薬の世界基準について

農産物に対する残留農薬の基準は国ごとに異なります。これは国によって農業事情や食文化に違いがあるためです。国内産業における農業の割合や農産物の需要、輸出入のバランスなど様々な理由で残留農薬の基準が決められています。

同じ農産物でも国によって基準値が異なるのは珍しいことではないので、すべての国で統一された基準は存在しないと言えるでしょう。お米を例にした場合、日本での基準値が他の国でそのまま適用されるわけではありません。

日本よりも厳しい基準を設けている国もあれば、成分によっては調査の対象外とする国もあります。農産物をどう扱うか、どれだけ消費するかによって残留農薬の基準値が変わるのです。残留農薬の基準の違いは輸出入の際に問題をもたらします。

自国では安全とされる基準値であっても、その農産物を購入する他国では健康を損なうと見なされることもあるためです。このような場合、農産物を輸入する側の国の基準値に合わせるのが一般的ですが、農薬の成分に対する認識の違いから数値の変更が行われないこともあります。

国ごとで異なる基準値の修正や安全な数値の算出は農産物の輸出入に関する重要な課題と言えるでしょう。

市場に出回る農産物の正しい見分け方

市場に出回る農産物の中には色や形が不自然な物が稀に混在しています。白い粉のような物がこびり付いた果物や黒い斑点が生じている野菜は滅多に見ないため、そのような物には農薬の成分が残っているのではと不安になるのも無理はありません。

しかし、それらのほとんどは含有成分が表面化したものに過ぎず、残留農薬とは無関係です。

白い粉は脂肪分、黒い斑点は色素の集まりであり、農産物の安全性には何の影響もありません。表面にツヤがある物はワックスを塗っているという噂が流れたこともありますが、これも脂肪分が表面に滲み出て皮膜を形成した状態です。

農薬が開発されたごく初期にはツヤ出しのために使われたこともありましたが、現在ではそのようなケースはほぼあり得ません。残留農薬に対する危機意識を持つことは大切ですが、その一方で知識の乏しさから生じる過剰な忌避にも注意する必要があります。

誤った判断によって、旬のおいしい農産物を食べないという事態は避けるべきと言えるでしょう。農薬や農産物に関する正しい知識を学び、品質の良し悪しを冷静に判断するのが安全でおいしい農産物を選ぶ秘訣です。安全で鮮度が高い農産物を扱う通販業者を利用するなど、買い物の方法を工夫するのもひとつの方法です。

現在の農薬と残留農薬への取り組み

残留農薬を検査する目的や注意点

残留農薬の検査は様々な会社や団体が行っています。農産物の安全管理を徹底するのが目的ですが、検査方法によっては数値に違いが生じることもあるので依頼の際には注意が必要です。複数の会社や団体を比較して誤差を修正するのが一般的な方法ですが、数値に極端な違いがある場合は検査方法や扱ったサンプルに何らかの問題が生じている可能性もあります。

農薬検査のサンプルは対象となる田畑から複数採取しますが、場所に偏りが生じると誤った数値になってしまいます。正しい数値を出すには広い範囲から少しずつサンプルを選ぶことが重要と言えるでしょう。気温や降雨量など天候の影響も受けやすいので、サンプル採取の日時にも十分に注意する必要があります。

残留農薬の検査費用は会社によって異なりますが、金額の高さと検査の質は必ずしも比例するとは限りません。会社の実績や評判を確認したうえで判断するようにしましょう。

家庭でできる残留農薬の回避方法

市場に出回っている農産物のほとんどは安全ですが、それでも残留農薬に対する危機意識は必要と言えます。栽培の際に使われる農薬の成分は基準値の範囲に留まっていますが、薬剤の取り違えや希釈割合のミスなど人為的な理由で残留農薬が生じてしまう可能性も否定できません。

不測の事態に見舞われないためにも、日頃から購入した農産物は慎重に扱うことが大切です。農薬の成分はほとんどが無味無臭なので見た目で判断することはできません。表面の皮や葉を剥く他、細い部分を取り除くなど物理的な方法で対処します。

食器用の洗剤で表面を洗浄する方法もありますが、農産物の風味が損なわれることもあるので洗剤の量には注意しなければいけません。

残留農薬の知識を持つのが安全な農産物を選ぶ秘訣

安全な食生活を営むには残留農薬に関する知識が不可欠です。

日本国内に限っても作物ごとに基準値が異なるなど、ひと口に残留農薬と言ってもその中身は複雑です。残留農薬の基準値は国によって異なるので、個人で外国の農産物を輸入する際は注意しなければいけません。

また、農産物の状態に関する正しい知識を持つことも消費者に求められる姿勢です。